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神戸地方裁判所姫路支部 昭和23年(ヨ)38号 決定

申請人

大阪窯業セメント株式会社

被申請人

大阪窯業セメント株式会社廣畑工場労働組合

当裁判所は申請人の申請を相当と認め申請人に保証として金弐拾万円也を供託せしめ左の通り決定する。

主文

申請会社が被申請組合に対して提起する本案訴訟の確定に至る迄別紙目録掲記の物件に対する被申請組合の占有を解き申請会社の委任する神戸地方裁判所姫路支部執行吏をしてこれを保管せしめる。

右執行吏はこの旨を表示するため適当な公示方法をとらねばならぬ。

(別紙)

目録抄

大阪窯業セメント株式会社廣畑工場内

一、原料(クリンカー及び配合石膏他七品)

二、燃料(石炭及び格外亜炭他三品)

三、製品(高炉セメント他六品)

四、容器(五〇キロ入紙袋他二品)

五、副資材(銅材他四品)

六、鍵三十七個

申請

神戸地方姫路支部昭和二三年(ヨ)第三八号仮処分申請事件(昭和二三、八、一七申請)

一、当事者

申請人 大阪窯業セメント株式会社

被申請人 大阪窯業セメント株式会社廣畑工場労働組合

二、申請の趣旨

申請会社が被申請組合に対して提起する本案訴訟の解決するに至るまで、

(一)、被申請組合は自ら申請会社廣畑工場内に立入り若しくはその組合員をして立入らしてはならない。但し申請会社の許諾あるときはこの限りではない。

(二)、別紙目録掲記の物件に対する被申請組合の占有を解き、申請会社の委任する執行吏をしてこれを保管せしめる。右執行吏はこの旨を表示するため適当な公示方法をとらねばならぬ。右執行吏は申請人の求めにより、右物件の売買使用その他の処分を許諾することができる。

三、申請の理由

(一)、申請会社は、セメントの製造販売を目的として設立せられた資本金壱千弐百万円の株式会社であり、被申請人は産別系の組合であつて党員指導による申請会社廣畑工場における唯一の労働組合である。

(二)、申請会社は敗戦後における経済事情の変動と資材の入手難のため経営極めて困難となり、これに加えて近時における人件費の加速度的増大と金融逼迫とはこの情勢にいよいよ拍車をかけることとなつた。かくして申請会社の更生のためには経営の縮少と人員の整理は避くべからざる情勢となりつつある被申請人は早くもこの情勢を察知し、昭和二十三年八月十日組合代表者十数名が申請会社の大阪本社に来り(うち三名は組合員外の者)組合員解雇絶対反対等の要求をした。申請会社においても経営の縮少や組合員解雇は重大な事項なので慎重に考慮中であつたわけであるからその旨を会社代表に了解を求めると共に、会社の赤字克服につき被申請組合をし協議を重ねる旨を約してその会見を終つた。

(三)、しかるに被申請組合は同月十三日に突如として組合大会を開催し、申請会社廣畑工場の工場長兼取締役松井雄三の退任を要求する旨の決議をなし、翌十四日この決議を携えて、組合代表八名が再び大阪本社に詰めかけ、同人の退社を要求した(被申請人は右工場長個人に対しても別に退陣要求書を交付している模様である)申請会社としてはこの要求はこれを首肯するに足る理由を発見し得なかつたが出来るだけ闘争を避ける意味において慎重考慮を約すると共に同月十六日午後二時を期して赤字克服の具体案を双方から提出して協議を重ねる旨をも約した。

(四)、かくして十六日午後二時の会合において被申請組合は約束の具体案については何等の提案をしないのみならず誠意ある態度を示さず徒らに組合側のみの利益を主張してゆずらないので遺憾乍らこの会合はここに決裂するに至つた。申請会社としては争議の発生を未然に防止するため忍び難きを忍びできるだけ温健に事態を解決すべく努力を重ねたわけであるが、被申請組合の不誠意により、ここに全くその望みも絶えた次第である。かくて被申請人側から争議行為をなし来るは必至の状況となり申請会社にしてこのまま拙手していては会社はために自滅のほかはないのでここに自衛と已むなく重大な決意の下に同月十七日会社側からの争議行為として工場閉鎖を敢行した。

(五)、元来使用者側からの争議手段として、工場閉鎖が労働組合法上許容せらるべきは因より自明の理であるが既に使用者がこの工場閉鎖を行つた以上は労働組合が自ら工場に立入り、又はその組合員をして之に立上らしめることは出来ないことも理論上当然の帰結である。

しかるに被申請組合はこの理を解せず実力をもつて立入りを敢行し工場を占拠するの挙に出る形勢にあるのみならず工場内に有る会社所有の被申請人占有に係る資材製品等を不法に処分する虞が十分である。

かくて申請人から提起せんとする本案訴訟(争議行為としての工場閉鎖の確認並びに物件の引渡請求訴訟)の判決を待つていたのでは到底申請人の権利を実行するを得ないのでここに本件仮処分の申請をした次第である。

神戸地方裁判所姫路支部 御中

(別紙目録省略)

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